2100年を見据え、共生社会の実現を目指したまちづくりを行っている江戸川区。70万人の区民の暮らしの舵取りをする斉藤猛江戸川区長に、今年、そして未来の江戸川区について話を聞いた。
ともに生きるまちを目指す条例8つの個別条例を制定
「江戸川区は年齢や性別、障害の有無、国籍などに関わらずすべての人が幸せに暮らせるまち、良い意味で『ごちゃまぜ』のまちを目指しています」と斉藤区長。そのため区は令和3年7月1日に「ともに生きるまちを目指す条例」を制定し、これに紐づく個別条例を順次、打ち出してきた。
分野は子ども・男女平等とLGBTQ・高齢者・障害者・ひきこもり・経済(事業者)・外国人・生活困窮者の8つ。昨年12月にすべての個別条例が揃い、区の理念を伝えるとともに区民への理解を求めている。
目指す姿へ向かってまちづくりが進むが、江戸川区も人口減が予想されており、「未来の区民に負担を先送りしたくはありません」。
たとえば校舎の建て替え。現在、区内には97の小・中学校があり、計画的に建て替えを行っているが、「建て替え後70~80年間は校舎を使うので、そのまま建て替えると将来世代に負担をかける場合も。人口減少による子どもたちの教育環境なども踏まえ、統廃合を含め1つひとつ検討が必要です」。
子育てをトータルでサポート
区内外から「子育てしやすい」と言われる江戸川区。斉藤区長は高評価に感謝しつつ、時代に合わせて変化していくことが不可欠だと話す。
「区内で2003年に約7000人生まれていた赤ちゃんが、2023年は4000人台と出生率は33%減少。婚姻件数はさらに少なく48%減。子育て支援だけやっていればいいというわけではない状況です」
希望する人が結婚や出産できるよう、すべてのライフステージで子育てを見据えたサポートが必要だと区が打ち出したのが、「えどがわ50の子育てプラン」だ。
中学生には、自分の体の状態を知る「プレコンセプションケア」講座を実施。結婚を望む人には、出会いを支援するイベントやアプリの利用を支援。結婚した人には、区内の文化施設のチケットをプレゼント。出産後はベビーシッター支援や、家事を支援する時間を大幅に増やした。
また、学習支援が必要な子のために放課後には講師による支援も行っている。さらに、「小1の壁」を解消すべく小学校での朝の預かり対応を始め、令和8年度からは5歳児健診の実施を予定するなど、プランの拡充に取り組んでいる。
「5歳は生活習慣が確立し、社会性を身に付ける重要な時期。必要があれば早い段階で支援につなげます」
他にも、協定を結んだLDH所属のインストラクターがダンス授業を行うなど、教育の充実にも取り組んでいる。
災害に強いまちづくり
江戸川区で懸念される主な災害は、地震と水害だ。地震で対策が必要な建物倒壊については、建物の耐震化率は都内トップの98%を達成。今後、100%を目指す。
地震での火災の死者・被害を減らすためには、感震ブレーカー設置を進めている。また、初期消火できるよう区内に2万本以上の消火器が設置されているが、区民アンケートでは半数が設置場所を知らないという結果。そのため区民に消火器の場所を確認するよう発信している。
「水害についてはハザードマップを改定しましたので、自分の住んでいるところを確認してください」と呼び掛ける。
防災用カメラを活用した防災対策も進む。区内の100m以上の建物に高所カメラ、学校の屋上などに市街地カメラを設置し、災害時に全域を網羅することを目指す。さらに避難所にドローンも配備し、カメラの死角を作らないよう対処していく。
「昨年初めて開催した防災フェスも好評でしたので、今年も何らかの形で実施できれば。
最後になりましたが、今年も皆さまにとって素晴らしい1年になりますよう、行政一丸となって取り組んでまいります」
