放置したせいで、歯が砕けてしまった人も
単なるくせ、と放置しがちな「歯ぎしり・食いしばり」。ストレスの多い現代では、気付かぬうちに習慣化している人も多いだろう。だがそのせいで、歯そのものが損傷して抜歯が必要になる、顎関節がダメージを受けるなど、深刻な状況を引き起こす可能性も高いという。気になる症状や治療法、そして予防法について、北栄デンタルクリニックの槙坪孔明院長に話を聞いた。

北栄デンタルクリニック
槙坪孔明(まきつぼこうめい)院長
虫歯ではない歯痛の原因は「食いしばり」
「歯が痛い、歯がしみる、と訴えて来院され、診察しても虫歯も歯周病もない場合、その原因は実は歯ぎしり・食いしばりだったというケースが多いです」と槙坪院長。
硬くて刺激に強いと思われがちな歯だが、実は非常に繊細で、ちょっとした力でも敏感に反応する。「正座などをしていて足がしびれた場合、触ると痛みを感じますよね。食いしばりによる歯の痛みも、これと同じ仕組みと言えます。歯にずっと圧力がかかっていると、そのせいで歯がしびれて、ちょっとした刺激でしみたり、痛みを感じたりするのです」
気付きにくい「昼間の食いしばり」
食いしばりは睡眠中に起きる、と思われがちだが、昼間に起きることも少なくない。「肉体労働などでグッと力が入ると同時に食いしばる、という場合もありますが、オフィスワークでも集中して作業していると、いつの間にか食いしばっている、という人はかなり多い。そして大部分の方は、来院し食いしばりを指摘され、自分でも気にするようになって初めて、昼間も習慣化していたと気付く。それだけ気付きにくい行為なのです」
しかし放っておくと、歯がすり減って一部が欠けたり、歯が根本から砕けてしまったり、という重篤な状況に陥ることも。そうなると痛みも尋常ではないし、残った部分を取り除き、入れ歯やブリッジなどで対応しないと、正常にものを噛むことも困難になるという。また、顎関節を痛めて口が開けづらくなったり、開けるときに痛みが出たりすることもあり、話したり、食事したりすることさえも難しくなってくる。「食いしばり」による歯のダメージは思った以上に深刻だ。
治療はマウスピースで 定期的な通院も重要
「食いしばり」が厄介なのは、虫歯や歯周病のように根本的な治療ができないこと。「基本的にマウスピースによる対処療法になります」
余計な刺激を与えないよう、自分の歯にぴったり合ったマウスピースを継続して使用すること、そして定期的にチェックアップを受け、歯の表面に悪い変化がないか観察することが大切だそうだ。
マウスピースにはソフトタイプとハードタイプの2種類がある。使用は基本的に就寝時のみ。保険適用が可能で、平均して3000円ほどで作成できる。
自己診断は難しい 気になったら歯科医へ
家族からの指摘でもないとなかなか気付かない「食いしばり」。頬の内側や舌につく歯形や、力が加わり続けたことによる骨の腫れでわかるそうだが、自分ではわかりにくい。「口を閉じたとき、上下の歯が触れ合うことさえ、できるだけ避けたほうがいいくらい歯は繊細なものなので、ちょっとでも気になることがあったら、ぜひ早めに歯科医を受診してほしい」と槙坪院長。
レントゲンによる骨の状態の確認など、総合的な診断によって歯の状態を把握し、もし食いしばりの所見があれば、少しでも早く歯の負担を減らすことが肝心。「食いしばりには完治はありません。マウスピースも長く使い続けると、変形したり穴が空いたりと劣化は避けられない。3カ月~半年に1回、定期的に歯科医に通い、マウスピースと歯の状態を確認してもらうことが、自分の歯、ひいては全身の健康を守るために大切です」

マウスピース 負担をやわらげ、快適な眠りに導きます







