3年前から2100年に向けた街づくりに取り組んでいる江戸川区。年頭にあたり、斉藤猛江戸川区長に長期的な目で見た街づくりについて話を聞いた。
区民の選択は「中サービス・中負担」
江戸川区は昨年、小学校5年生以上の区民約64万人にアンケートを実施し、行政サービスの水準と区民の負担のバランスを取る前提で「高い」「中くらい」「低い」から、最も良いと思うものを選択してもらった。
「先人から受け継いだ江戸川区を、持続可能なものにしたい。しかし推計では区の人口は2100年には半減し、区の歳入も職員数も減少します。このことを区民の皆さまに正直に伝え、区の考え方を示すことが大切だと考えました」
1カ月で約4万6000人から回答があり、「中サービス・中負担」が約78%を占めた。これを受けて区は、「中サービス・中負担」を目指すべき方向性と定め、昨年12月の広報特別号で今後の取り組み内容を提案した。
「現在の高い水準のサービスを再構築し、区民の皆さまに適切な負担をお願いすることになります。300近くの項目を見直しますが、サービスの低下ばかりではなく、今より充実させるものや、必要なサービスは適正に提供していきます。今月末までパブリックコメントを募集していますので、ぜひご意見をお聞かせください」
外国人も同じ区民
将来へ向けて江戸川区が実施した大掛かりなアンケートは、もう1つ。令和5年に行った外国人世帯向けのアンケートだ。
区内在住の外国人は約4万7500人で、全国の自治体で10番目。2100年には区民の6人に1人が外国人になると予想されている。
「すでに江戸川区では外国人は特別な存在ではなく、区民。区民として日本人と同じ行政サービスを受けてもらうには何が必要か、対象者の声を聞くために外国人全世帯(約2万2000世帯)に日常生活での困りごとや要望を尋ねました」
約2800世帯から回答があり、約7割が日本人とほぼ交流がないこと、「相談窓口」「日本語学習」「多言語対応」への要望が多いことが分かった。
昨年開設した『江戸川区多文化共生センター』は、こうしたニーズにこたえる総合窓口だ。
「言葉の壁ゆえに必要なサービスが受けられないことがないよう、支援していきたい。将来的には、日本人と外国人のギャップがなくなり、センターそのものが不要になることが理想です」
文化・スポーツにあふれる区に
一昨年11月に開館した『魔法の文学館』は、昨年12月12日に来館者10万人を突破し、今や江戸川区を代表する人気スポット。来館者アンケートで98%が「また来たい」と答えるなど満足度が非常に高く、リピーターが多いのも特長だ。
「角野栄子さんの魅力的な魔法にかかる方が多いのでしょうね。今年は『魔女の宅急便』刊行40周年という節目の年。文学館としても一緒に盛り上げたい」
昨年8月には区とLDH JAPAN、W
TOKYOの3者で包括連携協定を締結し、『ダンスの聖地』に向けた取り組みも始まった。
「野球が甲子園からプロを目指すように、ダンスもプロへとつながる大会や道筋を作り、江戸川区でダンスの裾野を広げていきたい。誰もが気軽に踊れる場所を作れないか、3者で区内を回っているところです」
また今年4月には文化・スポーツの拠点を整備し、区内の文化会・スポーツ協会・東京藝大・江戸川区が連携して事務局を運営する。
「4者連携で面白い化学反応が起こるものと期待しています。人生100年時代、『生きがい』がとても大切になるので、パラスポーツも含め、より身近に文化やスポーツを楽しめる拠点にしたい」と、意気込む。
現在の子どもたちが目にするであろう2100年の江戸川区へ向けて、今年も、区と区民による街づくりが続く。