伝統の技が光る粋な逸品
江戸時代から伝わる伝統工芸品「江戸扇子」の技を引き継ぐ江戸扇子工房「まつ井(北篠崎2)」では、本格的な夏に向けて出荷の最盛期を迎えている。
元禄年間に京都から伝わった「江戸扇子」は、雅やかな「京扇子」に比べ、粋ですっきりとした印象。京扇子が約30本の骨を使用し、扇面に華麗な綿や絹が用いられるのに対して、江戸の町人文化で生まれた江戸扇子は15本の竹の骨と和紙のみで制作される。パチッと音を立ててきれいに閉じるのが特徴で、寄席などで高座扇子としても使われる。
同工房で江戸扇子を制作しているのは、都内でもわずかとなった職人の一人である松井宏(江戸川区指定無形文化財/平成26年度東京都優秀技能者知事賞受賞)さん。区内では松井さんただ一人が江戸から続く伝統を守り続けている。松井さんはまた、伝統的な絵柄の扇子を制作する一方で、「えどがわ伝統工芸産学公プロジェクト」を通じて、女子美術大学の学生たちとコラボ作品も手がけている。
時代に合わせてデザインを変化
今年も本格的な夏を前に4月頃から注文が増加。5~8月は特に注文が集中するという。
近年は外国人観光客からも注目を集めており、ピンクや水色などのパステルカラーや、花柄など華やかなデザインの注文も増えているそうだ。
時代に即した新しい柄や色合いを日々模索しているという松井さんは、「まつりや盆踊りが増える夏に向けて、気軽に涼をとれる扇子を多くの方に手に取ってもらいたい。若い人にも使ってもらい、伝統工芸を知るきっかけになればうれしいです」と話す。
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現在はタワーホール船堀内の「アンテナショップ エドマチ」や、篠崎文化プラザ内の「伝統工芸カフェ・アルティザン」などで販売している。