公開日: 2025年9月5日

【地域サポート】「fubito・がん患者サポート」の現場から

浦安新聞
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がん専門の看護師に繋がることで「人生が動いた」

がん患者1人ひとりのニーズに応じて、最適な公的サービスや情報へと繋ぎ、「気持ち」と「生活」を支えるケアを提供する「fubito」。がん化学療法看護認定看護師資格を持つ、がん専門の看護師、柳澤史乃さんが代表を務める、画期的ながん患者サポートサービスだ。
看護師と繋がることで「人生」が大きく変化した女性について、話を聞いた。

妊活中にステージⅢの乳がんが…

「最初にご相談を受けたのはSNSを通してでした」と柳澤さん。
患者は当時34歳。夫と「そろそろ子どもが欲しいね」と話していた矢先、乳がんがみつかった。主治医によるとステージはⅢ。はっきりするのは術後だが、放射線治療とホルモン治療が見込まれると告げられたそう。
「手術まで2カ月あったため、主治医との面談後、ご自身で情報を集めた結果、抗がん剤治療やホルモン治療をしていたら、年齢的に子どもが産めなくなるのではないか、と不安でいっぱいに。ほぼ自暴自棄状態で連絡がありました」。治療はせず仕事も辞めて妊活に専念したい。子どもを産んだ後、自分は死んでしまってもいい、とまで思い詰めていた。
「まずは状況を整理し、ご自身が望むことの優先順位をつけ、それぞれの選択肢を提示しました。妊娠に関しては、手術までの間にご自身の『生み育てる力』を温存するため、卵子凍結という方法があることを紹介。不妊治療専門の看護師に繋げました。また、乳房再建についての希望も聞き、他病院の形成外科医にセカンドオピニオンを依頼。脇からの手術が可能であることが分かり、ダメージの少ない術式を主治医に提案することで、乳房を残すことが可能になりました」
最初はショックと混乱で、絶望の中にいた女性が、会話を重ね、不足していた情報を得ることで、治療や毎日の生活、そして未来について自分で選択できることに気づき、どんどん前向きに変わっていったという。その後、手術は無事成功。抗がん剤治療も終え、ホルモン治療も残すところ、あとわずか。今まさに妊娠を目指す新たなステップが始まろうとしている。
「人生を大きく変えるお手伝いができた、と思っています」

がん専門の看護師と繋がるということ

医師にとってはがんを治療することが第一義であり、そのために最適な方法を提案するが、患者の生活や人生という面から見ると、それは必ずしも最善ではないかもしれない。
「がん専門の看護師が関わり、家族や仕事など、患者の背景から病にアプローチ、必要な情報に繋ぐことで、患者は次第に平常心を取り戻し、思いを冷静に医師に伝えたり、自分の実情にあった治療法について、医師と話し合ったりすることが可能になります。つまり、私たちの役割は、医師と患者の関係を繋ぎ直し、向上させることでもあるのです」と柳澤さん。
「がん宣告に絶望しても、状況を理解して、本来の力を取り戻せば、ちゃんと自分らしく生きていくことができます。人生を取り戻す、そのためにぜひ、私たち看護師と繋がってほしい」

 

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