たくさんのご応募ありがとうございました。
ご応募いただいた中から見事選ばれた特選2句、佳作3句を発表いたします。
選者コメント
俳句は散文ではなく韻文詩です。一句を読み終わったとき、余韻が心に残ることが大切です。一句を読んで、「はい、分かりました」という結果や結論で終わってしまっては、感動が残りません。意識的に「結果」や「答え」を避けることが余韻を生み出す効果ではないでしょうか。また、散文ではないのですから、状況を丁寧に説明する必要はありません。あまりにも状況を説明しすぎると、余韻を生み出す隙が無くなってしまいます。説明をなるべく少なくするためには、動詞を少なく、できれば一つぐらいにすることが肝要です。
「天辺に天辺生まる雲の峰」成規(句集『銀河の一滴』より)
いちかわ俳壇
特選
- 船小屋の梁に寺子屋燕の子
(練馬区/桜石)
【評】冬季に海の荒れる日が多い日本海沿岸には、船を納めておく船小屋が各地で建てられています。その小屋の梁に燕が巣を作り、その巣にはたくさんの子燕が生まれ、親鳥の運ぶ餌を待ちわびて騒いでいます。それは、まるで寺子屋に通って来る腕白坊主たちの騒ぎのようです。「船小屋」「寺子屋」のリフレインも心地よいです。
- 数式と恋を覚へて夏期講座
(船橋市/よこさん)
【評】高校あるいは大学受験期の一コマなのでしょう。しっかり勉強するはずの夏期講座では数学の数式を覚えましたが、それにプラスして素敵な恋にも巡り合ったのでしょう。一挙両得をした忘れられない夏期講座だったに違いありません。受験の成果は? 恋の行方は? 読み手はその後が気になりますね。
佳作
- 菩提樹の花芳しく母となる
(杉並区/すみこ) - 紫陽花の葉裏の流れ年半ば
(市川/山秀) - 梅雨空に我が水鳥記冷酒干す
(国分/幸酔)
行徳俳壇
特選
- 枕辺に探す眼鏡や明易し
(富浜/小川はる乃)
【評】「明易し」の季語は、夏至を中心に夜が短い季節のことを言います。朝四時にはすでに空が明るくなっていて、起きるにはまだ早いので、眠る前に読みかけた本を再び読んでみようと思ったのでしょうか。そのような「明易し」の時間を、「探す眼鏡」という措辞を導入して、読み手にその状況を想像させています。
- 心弾む本屋の匂ひ七月来
(行徳駅前/人魚姫)
【評】 「七月来」という季語を使っていますが、上五で「心弾む」と言っていますので、きっと「梅雨明」や「夏休み開始」のことが作者の心に溢れているのでしょう。本屋には、夏休みに読んでみたい新刊書や行ってみたい「旅の本」が並べられています。実際の本の匂いというより、それらの本から楽しさが匂ってくるということでしょう。
佳作
- 夜濯を干す潮騒のベランダに
(幸/汐風爽) - 言葉なく足早めたり若葉風
(浦安市/満穂) - 骨董の火鉢の水槽黄スイレン
(下新宿/T子)
選者略歴峰崎成規。昭和23年生まれ。
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