たくさんのご応募ありがとうございました。
ご応募いただいた中から見事選ばれた特選2句、佳作3句を発表いたします。
選者コメント
芭蕉は「物の見えたる光、いまだ心に消えざる中にいひとむべし」と、つまり瞬間的に湧きあがった感動を、その感動の大きな波が消えないうちに俳句を作り上げるべきだと言っています。日常生活でも、大きな「驚き」や「発見」がありますが、ただ芭蕉のようにその感動をすぐに俳句に作り変えることはなかなか難しいことと思います。感動をすぐに文字にし、俳句にしてみようと思い、その時「納得」したと思った句も、翌日に読んでみると、どうも駄作に見えてしまうことがよくあります。もちろん瞬間的な思いつきでの良い句もありますが、やはり練りに練って心を何回も濾過させた句づくりは大事ではないでしょうか。俳句は発想に始まって、推敲で終わる。俳句作りは楽しさでもあり、また苦しさでもあると思います。
「黒潮は太き助走路初鰹」成規(句集『遊戯の遠景』より)
いちかわ俳壇
特選
- 春の宵色紙は美しき余白かな
(葛飾区/白翠)
【評】色紙にゆったりと書かれたのは俳句でしょうか。短冊と違い、色紙には文字以外の余白の部分は広く、俳句はもちろん水茎麗しく流れるような書体なのでしょう。「春の宵」の季語が、色紙の美しさと落ち着きとを感じさせてくれます。落款の朱も色紙にきっと見事に映えていたのでしょう。
- 眼裏に記憶の連写花吹雪
(若宮/大愚)
【評】桜の飛花落花はとても美しい景です。とくに花びらが纏まって舞う花吹雪は、一度見たらなかなか忘れられない記憶です。しばらく後でも目を閉じると、目裏にあの時の花吹雪が、写真の連写のように限りなく続けて舞っているのが思い出されるのでしょう。
「花吹雪ふぶきにふぶくゆくへかな」久保田万太郎
佳作
- 若松や大きく開く大手門
(船橋市/PNよこさん) - 沈丁花騒ぎ出したる今朝の雨
(松戸市/若仙人) - 春宵の秒針持たぬ古時計
(国分/青空)
行徳俳壇
特選
- 糸ざくら雨の重さになほ垂れ
(富浜/小川はる乃)
【評】糸ざくらはしだれ桜の別名で、市川真間の弘法寺、原木山妙行寺そして本行徳の円頓寺の枝垂桜はとても見事です。小さくたくさんの花弁に雨が積もり、枝垂桜が重くなってさらに下方へ垂れている景を詠んでいます。桜の時期に降る雨を俳句の季語では「花の雨」と言い、またその時の寒さを「花冷え」と表しています。
- 魚屋に出刃の気負ひや初鰹
(幸/汐風爽)
【評】 初物好きを粋と感じていた江戸っ子は、「女房子供を質に入れてでも」手にいれようとした初鰹です。また「俎板に小判一両初鰹」と詠われたくらい高価な初鰹でした。活きの良さを売っている魚屋は、この時とばかり出刃に気合を入れて初鰹を捌いたのでしょう。初鰹といえば山口素堂の有名な句「目には青葉山ほととぎす初鰹」があります。
佳作
- 言いかけし言葉捜せず春疾風
(塩焼/ニコ) - 池の中亀鳴く響きさざ波に
(南行徳/敬芳) - 五月闇樹洞睨むか急ぎ足
(行徳駅前/彩恵)
選者略歴峰崎成規。昭和23年生まれ。
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