『夢十夜』
夏目漱石/著(集英社)
紹介してくれたのは…浦安市立中央図書館 酒井さん
〈おすすめコメント〉
死ぬ間際の女性が「死んだら埋めてください、百年後に会いに来ます」と約束する夢、知らぬ間に眼が潰れている自分の子どもを背負った男性の夢など、10の夢で綴られる短編です。死をモチーフにしたものが多く、実生活と隣り合わせにある非現実世界が描かれています。行燈の明かり、闇にさす鷺の影、床屋が手に持つ琥珀色の櫛……全体として仄暗い情景描写は、幻想的な夢を見ているように感じられます。どの夢も4ページ程度ですが、その短さを感じさせず、逆に世界観の広がりすら感じさせるのも魅力です。
私がこの本を読んだきっかけは、高校の国語の授業で取り上げられたことでした。色や音といった映像的な言葉を選択した効果に、漱石の意図を感じ取ることができ、私にとって忘れられない作品となりました。
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