まちの歴史と文化を知るきっかけに
行徳の歴史や文化に触れることができる施設として2018年7月にオープンした「市川市行徳ふれあい伝承館」。常夜灯を含めたこの地域を中心にさらに行徳が活性化することと、人々のふれあいの場所となることを目指してつくられたものだ。施設の内容や、どう利用されているのかなどを取材した。
神輿製作は行徳の地場産業
2009年、後継者がなく廃業となった「浅子神輿店」。歴史的建造物である店舗兼主屋を、市川市が取得し、翌年には国の有形文化財に登録された。この建物を整備した展示施設と、向かいに新設した喫茶・軽食も可能な休憩所が「市川市行徳ふれあい伝承館」だ。
「貴重な建物を保存・活用する方法として、浅子神輿の大切な資料や行徳の歴史・文化を紹介する施設として活用することにしました」と、市川市文化国際部文化芸術課の中川さんは話す。
室町末期創業と伝えられる浅子神輿店の当主は代々「浅子周慶」を襲名し、神仏具の製作を家業としていた。明治に入ると、仏師としての技術を用いて神輿製作を始めたという歴史がある。
近世中世期から近代にかけて製塩と船運で栄え、寺社のまちでもあった行徳で、神輿づくりは地場産業として根付いていった。浅子神輿店は、その大切な地場産業を支える存在の1つだった。
充実した展示とていねいな解説
主屋では浅子周慶作の神輿や、神輿の部品、彫刻などを展示。行徳の歴史と文化をパネルや年表、写真で紹介しているほか、地元の「五ヶ町の祭礼」のパネルやビデオ、衣装の展示で祭りの魅力を伝えている。さらに浅子作の木造「軍鶏」や「日本武尊(やまとたけるのみこと)」、関ヶ島にあったもう1軒の後藤神輿に関する展示物など充実した内容だ。
展示内容はオープン以来大きな変更はないものの「細かな展示は少しずつ増やしています」と、案内役を務めている「行徳まちづくり協議会」のメンバーである鹿島さん。
「行徳の神輿文化と祭礼が市川市指定無形民俗文化財に指定されたことや、地図を使って行徳のまちの変遷を紹介するなど、工夫しています」
混雑していなければ30~40分ほど時間をかけて、ていねいに施設内を案内・解説してもらえるのも、同館の魅力となっている。
まちを知ればもっと好きになる
散歩のついでや、まち歩きのグループが立ち寄るだけでなく、大学の研究室のゼミ生が江戸~明治の行徳の歴史を学びにきたり、各地の祭り・神輿好きな人たちが訪れることもあるという。
また、小学生の校外学習で地元の歴史を学ぶ場として利用されることも多い。
鹿島さんは「平均で毎年5校くらい、今年も9月に3~4校が訪れる予定です。子どもたちは神輿を見て興味を持ってくれたり、自分の近所にも神社や神輿があることに気付いてくれたり。教育面でも役立っていると感じています。地元の歴史や文化を知ることで、自分の暮らすまちを誇りに思い、好きになってもらえたらうれしいですね」と話す。
中川さんは「行徳地域は、歩いても見ても楽しいまち。休憩所も自由に利用していただけますので、ぜひ気軽に立ち寄ってください」と利用を呼び掛ける。
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オープンから7年経ち、今や行徳のまち歩きの核となった同館。まだ訪れたことがない人も、行ったことがある人も、足を運べば、わがまちをもっと好きになるに違いない。