大空に翻る大幟
7月1日(火)、江戸川区上篠崎の篠崎浅間神社で、2年に1度の伝統行事「幟(のぼり)祭り」の大祭が行われた。富士山の山開きに合わせて行われる神事で、五穀豊穣を願う祈りが本殿で厳かに捧げられた。
神社は天慶元年(938年)創建の古社で、木花開耶姫尊(このはなさくやひめのみこと)を祀る。約4000坪の緑豊かな境内は「せんげん様の森」として親しまれている。
「幟祭り」は、江戸時代(19世紀初頭)に始まったとされる。神社周辺の5つの氏子地区が一対ずつ幟を奉納し、宵宮の未明に計10本の幟が人の手で立てられる。幟のはためき方でその年の吉凶を占うとも伝えられている。戦後に一時中断したが、1980年に住民や氏子らが「幟会」を結成。人力による幟上げが復活し、現在は隔年で開催されている。
祭りの見どころは、日本最大級とされる長さ約22m、重さ約1トンの「大幟(おおのぼり)」。太い杉丸太の幟柱の先端に桐筒と男竹を組み合わせた「くるり」が取り付けられ、大きな綱と滑車を使って、幟会のメンバーらが力を合わせて立てていく様子は圧巻(今年は6月29日に幟上げがわれた)。
大祭当日は真夏のような暑さの中、子どもからお年寄りまで大勢の人が詰めかけた。幟が風を受けて大きくはためくたび、見上げる人々のスマートフォンが一斉に空を向く。40を超える出店が軒を連ね、天狗を先頭にした40人以上の行列が参道を練り歩くと、沿道から歓声が上がった。境内の舞台では幼稚園児による「浦安の舞」が奉納され、笛や太鼓の音が涼やかに響く。にぎやかな屋台通りには笑顔があふれ、まさに祭り一色の一日だった。
「子どもが天狗を見て大喜びで。来てよかったです」と語る親子連れの笑顔が印象的。地域の文化を体験できる「幟祭り」は世代を超えて人々の心に残る。大空を背景にそびえ立つ幟の姿は、見る者の記憶に深く刻まれた。