公開日: 2024年4月19日 - 最終更新日: 2024年4月23日

[浦安新聞4/19号 医療特集] がんになっても、できる限り豊かに暮らすためには?

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緩和ケアによるアプローチ

2人に1人が罹患し、3人に1人が亡くなるといわれている、がん疾患。
もし自分ががんになったら、どのように病と向き合って闘病生活を送るのがベストなのだろうか?
選択肢の1つとして、「緩和ケア」を受ける人も多い。「緩和ケア」とはいったいどんなものなのか。
タムス浦安病院の緩和ケア内科の森竜久医師に話を聞いた。

森竜久医師

患者が抱えるあらゆる苦痛に寄り添う

WHOによると、「緩和ケアとは、生命を脅かす病による問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである」と定義されている。森医師は、「病気そのものだけでなく、病気によって困っていることや抱える問題に対する、その人の人生や生活の質をできる限り良い状態に保つためのアプローチ全体のことを指します」と説明する。

がんにかかると、痛みや苦しさといった身体的苦痛以外にも、仕事を辞めざるを得ないなど社会的な苦痛、家族を残して亡くなることへの不安といった精神的苦痛、もし亡くなったら自分はどこへいってしまうのだろうといった死生観に関わる苦痛など、患者はさまざまな苦痛を抱えることになる。そうしたあらゆる苦痛に対して、医師はもちろん、看護師や薬剤師、心理士やリハビリセラピスト、栄養士、ソーシャルワーカー、相談員などがチームを組んで多角的に治療や支援をしていくのだ。

例えば、金銭的な悩みを抱えているのであればソーシャルワーカー経由で自治体へつないだり、在宅療養を希望しているのであれば、リハビリ専門士が自宅を見て必要なバリアフリー改修をアドバイスしたり。病気が進行するとどうしても食欲が落ちるので、その際は栄養士の出番。身体の痛みを緩和するための医療用麻薬は、薬剤師が専門だ。「身寄りのない患者であれば、葬儀屋の選定について相談に乗ることもある」という。

40代など若い患者の場合、親が看病や看取りをするケースや、小さな子どもがいるケースもある。そういった場合には、心理士や看護師が親や子どもの精神的なケアをしたり、患者本人のつらさに寄り添ったりする。患者とその家族、両方が対象であることが、緩和ケアの大きな特徴だ。

早期の介入でベストな治療方針を選べる

緩和ケアは、ホスピスと比較されることが多い。「ホスピスは施設のことを指していて、基本的に末期の症状を抱えた人が入院する場所です。緩和ケアは患者の苦痛をなるべく取り除くことを指し、より広い意味を含んでいると考えていただければよいでしょう」と森医師。ゆえに、在宅や外来通院での緩和ケアも存在する。また、例えば在宅療養をしている最中に一時的に入院をし、その間に必要な家の改修をするケースもあるし、通院でなかなか症状がコントロールできない人がいったん入院し、薬や治療法の調整を行った上でまた通院に戻ることもある。森医師は、「ホスピスや緩和ケア病棟は、入ったら最後というイメージが強いですが、決してそんなことはない」と話す。

そして、「罹患後、早い段階から緩和ケアを受けていただくことで、よりその人に合ったアプローチができるようになる」とも語る。なぜなら、がん治療においては「治療をいつ辞めるかの判断」が重要なことの1つだからだ。亡くなるぎりぎりまで抗がん剤治療を続けるのか、改善の見込みがないとわかった段階で治療を止め、終活や家族との旅行などに時間を使うのか。早期に緩和ケアチームと関わって、総合的な知見からアドバイスを受けることによって、このような判断がしやすくなる。
「がんにかかる人は、今後も増えていくでしょう。緩和ケア病棟を含め、老健施設や介護療養院などでのニーズも増えるはず」と森医師。もしもの時に慌てて判断をしないためにも、日頃からアンテナを張って情報収集をしておくことが大切なのではないだろうか。

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本情報は、行徳新聞・いちかわ新聞・浦安新聞・葛西新聞各紙 2024年4月19日号に掲載しています
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