
たくさんのご応募ありがとうございました。
ご応募いただいた中から見事選ばれた特選2句、佳作3句を発表いたします。
選者コメント
私の所属する俳句結社「沖」の初代主宰・能村登四郎の語録に「俳句の土俵というものには素人も玄人もなく一つだということである。その時の一句の出来、不出来で決定するものである。」と俳句は誰でも挑戦できることを述べています。しかし、同じ語録には「私は俳句は人間を描くものだと自分流に解釈している。松や竹を詠んでも、その裏に詠む人の人生が見えなければつまらない。」とも言っています。つまり、誰でも俳句を作ることができるが、今生きている自分の姿を句の中に表現しなければ、俳句作りの意味がないということを言っているのです。ぜひ句作りをしながら、自分が現在生きいることをじっくり振り返ってみてはいかがでしょうか。
「今思へば皆遠火事の如くなり」 能村登四郎(句集『菊塵』より)
いちかわ俳壇

特選
- 借り出され教頭疾走運動会
(船橋市/よこさん)
【評】秋は学校の運動会のシーズンです。生徒の運動会を見入っていた教頭先生が、競技に参加してくれと、突然頼まれたのでしょう。その教頭先生は、意外にも駆け足が早かったのでしょう。校長先生ではなく、教頭先生に視点を当てたのが、句に俳諧味を添えます。こんな運動会の風景はありそうですね。
- 爽やかや相撲部屋より笑ひ声
(葛飾区/白翆)
【評】九月場所も終わり、十月のロンドン場所の公演を待つ力士でしょうか。三十四年ぶりの海外公演で、現地の人々も嬉しく待ち構えているでしょうが、初めて海外で相撲をとる力士はもっとわくわくした気持ちでしょう。力士の笑い声が相撲部屋から聞こえてきます。十月の「爽やか」という季語がその気分をとても上手く表現しています。
佳作
- 水と和し腑で酒と和す新豆腐
(国分/青空) - 手のひらへ楓ひと葉の裏表
(杉並区/すみこ) - いちょうの木緑黄色や影長し
(市川/山秀)
行徳俳壇

特選
- ふんはりと結ぶ風呂敷白芙蓉
(富浜/小川はる乃)
【評】芙蓉の花は白やピンクの色で十〜十五センチほどの大きな花です。その花弁は柔らかそうで、ちょうど風呂敷をふんわりと結んだ形のように見えたのでしょう。その花の真ん中から、雌蕊は大きく伸びていて先端で曲がっています。それはちょうど風呂敷の結び目の形に見えるようです。しっかりと芙蓉の花を見据えた写生句です。
- 紅葉入りまろみ加はる谷の水
(本塩/雄心)
【評】秋も深まり、山には紅葉が盛りを迎えています。谷川に落ちた紅葉が、川の景を美しくします。まるで谷川の水に味を付けたかのようです。その状景を「まろみ加はる」とした中七の表現が絶妙です。確かに、紅葉が流れている谷川の水は、まろやかな味がするかもしれません。
佳作
- 水引や手箱にははの心づけ
(行徳駅前/あべちゃん) - セルフレジにやうやく慣れて十二月
(幸/汐風 爽) - 秋惜しむ神門くぐる風の音
(末広/無風)

選者略歴峰崎成規。昭和23年生まれ。
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「いちかわ・行徳俳壇」募集中
【12/5~12/26募集分】


