浦安の医療特集 2025.4
「 順天堂大学フレイル・ロコモ予防ドック10年プロジェクト」

介護予防は健康状態を知ることから
「皮膚」からも介護予防に挑戦する!

順天堂大学は市民の「介護予防」を継続的にサポートするために、令和6年から「順天堂大学フレイル・ロコモ予防ドック10年プロジェクト」を開始。市民を対象にさまざまな取り組みを行っている。

このプロジェクトにはかゆみに特化した研究機関「順天堂かゆみ研究センター」も参加。かゆみと介護予防の関係や、高齢者に多い皮膚のトラブルについて、同センター先任准教授の冨永光俊さんと医療看護学部の加茂敦子さんに話を聞いた。

浦安市の介護予防をサポートするために、浦安市介護予防プロジェクト事業の一環として市と協働で行われる同プロジェクトでは、介護予防の初めの一歩は「自分の健康状態を知ることから」と捉え、介護予防測定会(筋量や筋力、皮膚の健康度など)やフレイル予防講座などを実施している。年に1回の測定を毎年受けて、経年変化を予防に役立ててもらいたいとの思いを込めて「10年プロジェクト」と名付けられた。

このプロジェクトには医療看護学部(高洲キャンパス)、日の出キャンパスの医療科学部・健康データサイエンス部・薬学部、医学部附属浦安病院内にある順天堂かゆみ研究センター、スポーツ健康科学部(印西市)という同大学の県内4拠点が参加している。

アジア初、かゆみ専門の研究機関
「順天堂かゆみ研究センター」

浦安病院内環境医学研究所(髙森建二所長)にある「順天堂かゆみ研究センター」は2019年開設。日本のみならず、アジアでも初のかゆみに特化した研究機関だ。
「乾燥すると肌がかゆくなるなど、かゆみはとても身近な症状ですが、じつは体の異常を知らせる信号でもあります」と冨永さん。例として、がんが見つかる前にかゆみが生じるケースがあること、腎臓病・肝臓病においてもかゆみが発生することなどを挙げる。

また、皮膚には体の内側から水分が失われるのを防ぐとともに、外からのアレルゲンの侵入を防御する役割がある。いわばバリア。かゆみの発生はそのバリアが壊れているということでもあり、「かゆみは大事な体からのサインととらえて研究を続けています」。

セルフケアは保湿から
肌のバリア機能低下を防ぐ

同プロジェクトにおいては、皮膚の健康度として、皮膚の水分量やpH、かゆみに関する測定を行い、高齢者に多い皮膚トラブルの予防につなげる。

冨永さんによると、高齢になるほど水分や皮脂量が減って、皮膚は乾燥し、かゆみが生じやすくなる。放っておくと悪化することも。自分でできるケア方法については「まずは保湿です。保湿クリームをこまめに塗ること。保湿効果のある入浴剤も効果がありますがお風呂の温度はぬるめに。熱すぎる湯につかると皮脂成分が溶けて、よけいに乾燥してしまいます」。また、体を洗う際は40℃程度のぬるま湯でやさしく。ボディソープなどを使うなら弱酸性(pH4.5程度)のものを選ぶのがポイント。「昔はヘチマでごしごし洗っていたという方もいらっしゃいますが、強いこすり洗いは禁物です」

年2回実施する同プロジェクトの介護予防測定会では筋力・筋肉量に加え、皮膚の健康度もチェック。昨年のデータでは個人差はあるものの、乾燥している人が多くみられた。参加者が受け取る測定結果シートには対処方法も記載されている。

また、加茂さんによると、ドライスキンでは、かゆみを伝える神経線維の末端が、皮膚表面まで伸び、かゆみを感じやすくなるという。同センターでは、適切な保湿剤の塗布がこれらの神経線維を抑えることを研究・報告している。同プロジェクトを通して「このような研究所で持つ知識を、市民のみなさまの健康維持に役立てていきたい」。続けて、「最近では、皮膚の健康度と認知症との関連が報告されていますが、まだまだ不明な点も多いので、さらなる研究が必要です」と加茂さん。

年齢に伴って、心身の機能は低下するが、これらは可逆性であるため、今の自分の状態を確認し、早めに気付いて対策することが大切。未来の自分のために心身の健康を保つ第一歩として、皮膚という観点からも健康状態をチェックしてみてはどうだろうか。

※今年の介護予防測定会の予定や申込み方法は、浦安新聞5/9号に掲載。

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