■「健康寿命日本一のまち」へ
~市川市の取り組み~
市民の誰もが健やかな生涯を送ることができる「健康寿命日本一のまち」を、令和4年からスローガンに掲げる市川市。市が考える指標や健康寿命を延ばすために行っている取り組みについて、健康都市推進課に聞いた。
市川市における健康寿命とは
健康寿命とは、健康に暮らせる年数の指標。「健康上の問題で日常生活が制限されることなく自立して生活できる期間」と定義され、平均寿命から日常的に介護を必要とする期間を差し引いた、元気に過ごすことができる期間の平均を示したものだ。3年ごとに実施されている国民生活基礎調査のデータをもとに国・県単位で算出されるが、市町村単位では示されない。
そこで市川市では補完的な指標となる「日常生活動作が自立している期間の平均」として、65歳の人が介護保険の「要介護2」になるまでの平均自立期間を算定。65歳(年)に、この平均自立期間(年)を足したものを市川市独自の健康寿命として算出しており、令和3年は男性が82.94歳、女性は86.02歳となっている。
指標となる2つの数値を定期観測
市が掲げる「健康寿命日本一のまち」は、国内1位や、他自治体より1歳でも長寿を目指すということではないと、担当者は話す。
「重要なのは市民1人ひとりが心と体の健康を保ち、元気で活力あふれる生涯を送ること。市川市はそれが実現できるまちを目指しています」
目指すまちの姿にどれだけ前進しているか、現状を見極めるために、市は2つの数値を指標として定期的に観測し、公表している。
1つは、健康であると感じる市民の割合。市は市民を対象とした健康に関するアンケート調査を定期的に行っており、昨年度は11月に実施した。1635人から回答があり、88.6%が健康であると感じていることが分かった。前年度も約90%だったことから、概ね高い水準を維持していることが分かる。
そしてもう1つが、先ほど紹介した65歳の平均自立期間だ。
「この平均自立期間を延ばすことが、健康寿命を延ばすことにつながるわけです」
取り組みを4つに分けて紹介
健康寿命延伸に向けて、市ではさまざまな取り組みを行い、ホームページで紹介している。大きく分けて以下の4つだ。
- 健康づくりに役立つ知識や教養を高めることができる座学講座・健康教室などの情報を集約した「知ろう」
- 体験型イベントや日常生活において継続的に取り組める健康づくりが身に付くサポート事業などの情報を集めた「参加しよう」
- 自身や家族の大切な健康を守るための予防事業の情報を集約した「予防しよう」
- 健康や悩みごとについて相談できる場や、支援につながる情報を取りまとめた「相談しよう」
高齢者はもちろん、子どもも若い世代にも有益な情報が分かりやすくまとめられているので、ぜひ活用しよう。
「どの世代であっても、今から心身の健康を考え、行動することが大切です。市民の皆さま、一緒に健康寿命日本一のまちを目指しましょう」と同課担当者は話した。
■ 命をつなぐ「ラピッドカー」とは?
ドクターヘリでは届かない現場へ
東京ベイ・浦安市川医療センターが導入を目指していた「ラピッドカー」へのクラウドファンディングが、今年3月31日に終了した。最終的に2625万9000円もの支援が集まり、目標の1200万円を大きく上回る結果になった。
「ラピッドカー」に寄せられた想いが、地域の命を守る力に変わっていく。同センター救命救急センター長・危機管理室長の舩越拓医師に、導入の背景や役割を聞いた。
救命救急センター長・危機管理室長
舩越拓医師
「あと数分」を埋める、新しいかたちの医療
「救急車の出動は年々増えており、病院に着くまでの時間も少しずつ延びているのが現状です。通報から病院到着まで、平均で40~50分ほどかかることもあります」と舩越医師は語る。時間の遅れは、心筋梗塞や脳卒中、心停止、重いけがなどの患者にとっては命取りだ。「病院で待つだけでなく、医師が現場に行く。そうした新しいスタイルの医療が、今の都市には必要なんです」
空から現場に急行するドクターヘリもあるが、住宅が密集した浦安市・市川市・江戸川区の地域では、電線や建物の関係で着陸できる場所が限られている。そこで考えられたのが、街中を自在に走れる「ラピッドカー」だった。
ラピッドカーは「医師がやってくる車」
ラピッドカーは、乗用車を改良した医療用の車だ。患者を病院へ運ぶ救急車とはちがい、医師や看護師、救命士が乗って現場にかけつけ、応急処置を行うための車である。車内には、初期治療に必要な薬や医療機器、ポータブルの超音波検査機器などが積まれている。
救急車が到着する前に、先にラピッドカーが現場へ到着し、必要な処置を始める。そして、後から来た救急車と合流し、医師の判断で最適な病院へ搬送できる。救急車が患者を運び、ラピッドカーが「医療」を運ぶ。「それぞれの役割があるからこそ、命を守る力が広がっていくんです」
市民の願いが支えたプロジェクト
クラウドファンディングで集まった支援には、温かい応援メッセージも数多く寄せられた。「期待の大きさを感じると同時に、責任の重さも感じています。いざという時、地域にしっかりとした救急体制があれば、大きな安心につながる。そんなまちづくりの一助になれたら」と舩越医師。
現在、今年10月頃の運用開始を目指し、すでに運用している順天堂浦安病院など地域の医療機関との連携や、東京・千葉の境界地域における調整が進められている。「ラピッドカーの運用が始まったら、皆さんにお知らせしたい。引き続き見守っていただければうれしいです」と語った。
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